~ 分業化された生産工程が輪島塗の高品質を支えています ~
輪島塗を特徴づけている代表的なものに「布着せ」と「地の粉」があります。
お椀の縁など傷みやすい部分を布着せで補強することによって漆器が丈夫にします。
輪島で産出される地の粉(じのこ)を下地(したじ)に使って器の強度を高めています。
地の粉の粉の大きさによって、通常一辺地から三辺地まであり、一辺地付け、二辺地付け、三辺地付けと何度も使います。
木地から完成品までの工程は、およそ次のようなものです。
木地 ⇒ 木地固め ⇒ 木地磨き ⇒ 布着せ ⇒ 着せもの削り ⇒ 惣身付け ⇒惣身磨き⇒ 一辺地付け ⇒ から研ぎ ⇒ 二辺地付け ⇒ 二辺地研ぎ ⇒ 三辺地付け ⇒ 地研ぎ中塗り ⇒ 中塗り研ぎ ⇒ 小中塗り ⇒ 小中塗り研ぎ ⇒ 拭き上げ ⇒ 上塗り ⇒ 完成
この間、塗った漆を乾かしたり(固化させたり)、寝かせたり、完成までに長い時間が掛かります。何度も塗り重ね、丁寧に時間を掛けることで丈夫な漆器が出来ます。
上記の工程に加え、艶を出す呂色仕上げが加わったり、沈金や蒔絵の加飾が加わったりします。 輪島の沈金や蒔絵には高い技術があります。
輪島塗の「堅牢かつ優美」を可能にしているのは、製造が分業化されていることにあります。
木地作り、下地職人、中塗り、研ぎ、上塗り、加飾など、分業化されたそれぞれの仕事を専門に行うことで、それぞれの工程の技術が集中的に磨かれます。一人の人が木地作りから下地・・・そして上塗り、加飾を行い、すべての工程のエキスパートになることはなかなかですが、仕事が専門職化していれば、それぞれの分野での技術の向上が進みます。
さらに、高品質の漆器を作るためには、各工程の技術水準の維持が必要です。輪島では、各工程の職人さんが一定水準の高い技術を有する状態が維持され、「堅牢優美な輪島塗」が作られてきました。
また、分業化は、大量生産を可能にします。輪島では、技術水準を維持した質の高い漆器を効率よく生産することが可能になっています。
もっとも、近年は職人さんの減少だけでなく、輪島塗産業に従事する人も減るなど、課題がないわけではありません。
制作過程は、非常に多くの工程に分かれています。各工程は専門職化しており、それぞれ、専門の職人が仕事にあたります。
製造工程は、大まかに分けると、 まず、1.木地作り、2.塗り、3.加飾の三つに分かれます。
1.木地作りは、作る木地の種類により、さらに(1)椀木地師、(2)指物師、(3)曲げ物、(4)朴木地師 の四つに分化します。
(1)椀木地師は、お椀など、轆轤(ろくろ)を使って作る木地を専門に作ります。
(2)指物木地師は、御重や角物盆などを作ります。
(3)曲げ物は、丸盆や曲げわっぱなどを作ります。
(4)朴木地師は、猫足など、複雑な形を削れだして木地を作ります。
2.塗りの工程はさらに多くの工程に分化し、ここでもそれぞれの工程に専門に携わる職人がます。
仕上がった木地に下地を付けをすることを専門とする 下地職人に始まって、 中塗り、 研ぎ、 上塗り、 呂色(ろいろ)などのそれぞれに専門の職人がいます。3.加飾の方法には沈金と蒔絵があります。沈金で加飾する人を沈金師、蒔絵で加飾する人を蒔絵師と言います。
以上、大雑把に輪島塗の製造工程のアウトラインを示しましたが、実際の製造工程は、沈金や蒔絵なども含め「輪島塗製造の124工程」ともいわれるほどに複雑です。作られる輪島塗の製品の種類によって、工程の流れが異なることもあります。
実際に製品を作る際、製品の企画・立案し、分業化された製造工程全体を統括して製品を作り上げていくのは塗師屋さんです。
塗師屋さんは、”塗り”の製造工程を担いながら、分業化された製造工程全体を統括し、製品を完成させ、そして販売も行っています。
現在では多少、異なってきている部分もありますが、基本的には上述の通り、塗師屋さんが輪島塗製品を企画・制作し販売する、という形になっています。